寿司は無限

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魔法戦争全話レビュー 第三話『魔法学院と恋占い』

第三話『魔法学院と恋占い』

脚本:村上桃子 演出:八谷賢一 絵コンテ:工藤利春作 画監督:星野真澄・服部憲知

 

 魔法戦争前半戦で最高の話数。いわゆる神回だ。マホコ曰く「恋占いとか告白とか女子力の高いお話」。

 巨大タコや巨大くまのぬいぐるみが乱舞する練習場。朝練をする武たち。くるみがなぜかメチャクチャ露出度の高い服セクシーショーをしていると、当然男子がよってくる。そこにはマッシュルームカットの姿もある。武に見せたいのに、武は練習に夢中であまり関心を持ってくれないのが哀しい。伊田は爆発している。

 

「くるみ~授業始まっちゃうよ~」

 明るい六ちゃんの声が響く。露骨に不愉快そうにするくるみ。確かにかなり馴れ馴れしい態度だ。この短いシーンで六ちゃんが対人距離をつかめない子だと示す。六ちゃんは気にすることなく、くるみと一緒に更衣室に消えていった。六ちゃんはくるみを占いの館に誘うが、ここでもまったく会話が噛み合わない。

 

六「一緒に行こうよ!」

くるみ「お一人でどうぞ」

六「何占ってもらう!?」

 一方的にしゃべるタイプのコミュ症っぽい。恋占いには興味があり、くるみはチケットをもらった。その後は六ちゃんの胸の話になる。くるみは能力で将来胸が大きくなることがわかっているのだから、あんまり気にすることもない気がする。

 この3話では六ちゃんがクラスでハブられていたことが判明する。裏切り者の妹という扱いを受けているのだ。だが、魔法による洗脳は、比較的ポピュラーな手段らしい。また十が洗脳によって離反したのを隠しているのでもない。つまり、これは単なるイジメである。元々気に入らない六ちゃんに、叩きやすい材料ができたから叩いているにすぎないのだ。六ちゃんはしゃべるタイプのコミュ症で、クラス内で人間関係を築くのに苦労していたことが伺える。魔法戦争演出は巧みで、台詞で説明することなしにキャラクターの置かれている状況やそれぞれの性質を理解させてくれる。でなければ、原作7巻分を1クールに収めることなどできない。

 

 ところかわって食堂ではすばる魔法学院写真部の会議が繰り広げていた。大量のくるみの盗撮写真。獲物の分け前を決める写真部三人組に対し武は激怒。不満そうにする写真部に、くるみと付き合っていることを告げる(実はフェイク)。それをたまたま六ちゃんが聞いてしまったところから騒動が勃発する。

 六ちゃんはなんと、くるみの元に出向き、武と事故でキスしてしまった旨を告げるのだ。

六「助けてもらった日、保健室で転んで……くちが当たっちゃたのぉ」

 これにくるみは激高して走り去る。六ちゃんがクラスで浮いている理由がわかるというものだ。くるみは武を見つけると激突、そのくちびるを奪おうとする。しかし、武に防がれてしまう。くるみの過激な態度に、辟易した武はフェイクの恋人関係を止めるように言う。くるみは絶望し、3日ほど武らを無視するようになる。そんな折、マッシュルームカットの告白騒動のおかげで、自体は収束する。マッシュルームカットに追いすがられてトラウマを蘇らせたくるみを武が救ったのだ。マッシュルームは武に腕を締めあげられて、くるみに近づくなと凄まれる。ちょっと可哀想だ。

武「俺は付き合っているフリをやめようとは言ったけど、無視しろとは言ってない。やりすぎだよ」

くるみ「だって……嫌われたと思ったから……」

 くるみが写真部から押収した写真を見つける。その中から、一枚の写真を選んで、武に渡すのだった。それはあの水泳の時の写真で、どういうチョイスなのかは不明。この恋愛のごたごたの一コマが超重要な伏線になる。これは魔法戦争が、日常的な人間の心の動きを大切にしていることとも結びつく。人間を支えているのは、こうしたささやかな思い出なのだ。それは、戦争のうねりの中にあっても変わらないということを、スズキヒサシ先生は言っているのであろう。

と、雨降って地固まったかのように見えたが、くるみの不安は晴れなかった。

 

くるみ「武、あなたは誰が好きなの……?」

 武からすれば、ハッキリ言ってくるみは面倒な女ということになる。原作ではもっと露骨に泥沼に陥っている気にもなっていた。だが、それこそがくるみが良さなのだ。世界が滅んでも、くるみの恋心だけは変わらないだろうこのくるみとの恋愛のごたごたこそ、魔法戦争の本筋といえるかもしれない。